前回で筆の洗い方をご紹介しました。根元についた墨をいかに落とすかがポイントなのです。
根元の黒いプラスチックが割れているのが見えますね。しっかり洗っていても、長く使っていると筆の根元がふくらんできたり、割れてきたりします。筆の寿命はズバリ!
“持ち方”と“洗い方”で決まる!
と思っています。持ち方50%洗い方50%、なのです(経験則ですが)。
実際、筆ってどのくらいもつの?
筆の寿命はどのくらいでしょう?
うちの教室では、子どもたちの筆はすべてこちらで預かり、使い終わると教室に置いていかせます。稽古が終わってから私が全て洗っています。
うちの教室には生徒の数は80人くらいいます(幽霊部員を含めるともう少しいるかな?)が、月曜から土曜までの稽古でこの80人分の筆を私がひとりで洗っています。
80人×大筆・小筆の2本=160本、毎週160本です。
160本×4週(1ヶ月)=640本、1ヶ月640本、洗うことになります。
これを5年程度続けているのです。なかなかのデータ量じゃないですか?
筆もうれしい私もうれしい
私が筆を洗い始めて4,5年になるでしょうか。
ほぼ毎日、子どもたちに教えた後に筆を洗いますが、筆には名前が書いてありますので、これはあの子の筆かーだいぶ悪くなってるなー、とか思いながら洗います。
そこで気づいたのは、持ち方のいい子の筆は長持ちしている、ということです。そして持ち方がなかなか直らない子は、早く根元がふくらんできます。
さらには、
習字の上手な子は持ち方がよく、筆も長持ちしている
という傾向が見られたのです。
「しっかり洗ってある筆」で、「正しい持ち方」をして書く習字は楽しいものです。
筆が思ったように動き、書いてて楽しいのです。
しっかり筆が洗ってある→書きやすい→うまく書ける→楽しい→また書きたい
という、よい循環が生まれているように思えます。
とりかえのタイミング
さて、ここで2本の筆を見比べてみましょう。どのくらいになると筆の交換なのでしょうか?
左が使い始めてまだ2、3ヶ月の筆、右が根元がふくらんできてそろそろ修理か取り替えしようかな?という筆。
違いがわかりますか?
こちらが左の筆の根元、ちゃんと墨が落ちています。
こちらが右の筆の根元、こちらもちゃんと洗っています。
わかってきましたか?
左の筆は根元からまっすぐ毛が立ち上がってるのに比べ、右の筆は根元からすでに毛がふくらんできています。
水で濡らしてみました。こうすると分かりやすいですね。右の筆は根元からすでにふくらんできています。
右の筆のように、洗っても根元がふくらんでいるとそろそろ寿命なのです。
この先使っていくと筆はチューリップのように開くようになるでしょう。
筆は消耗品です
うちの教室の子たちは、私が筆を洗っているわけですから洗い方50%はひとまず大丈夫なわけです。後の50%、持ち方によって寿命が変わってきます。
結論から言うと筆の寿命は長く持って1年くらいです。
この“1年くらい”は目安です。
・筆の持ち方が悪い (2-3.持ち方)
・墨を根元までつけないで書く (2-5.墨をつける・そろえる)
・力を入れすぎて書いている (2-4.エクササイズ③)
これらの原因で筆は早く悪くなります。
また、1年以上使うと根元がふくらんでいなくても筆の毛先が減ってきたり、毛がへたってきて書き味がおかしくなります。1年を過ぎたらまだ書ける筆でも書きにくい感じがするはずですので、買い換えていいでしょう。
(後述しますが、ちょっと手をかけてやればもう少し筆の寿命を延ばすこともできます)
ですので正しい持ち方がまだ身についていない子の筆は早く悪くなります。
なるべく早く身に付けてもらうためのエクササイズもありますのでお試しください。
筆も長持ち、字も書きやすい。正しい持ち方と洗い方。大事です。
ちなみにうちの教室は、年間で各曜日約40回稽古日があります(だいたい各曜日とも40+数回)。
そして1回の稽古はひとり、毛筆で50分~60分くらい書いているでしょうか。
1時間(60分)×40回=40時間。
約1,000円の筆で40時間書ける計算になります。
これを高いとみるか安いとみるかは人それぞれでしょうが筆は消耗品です。これを忘れないでください。
使っていると必ず毛が減ってきますし、持ち方が悪ければ早くふくらんできます。
小筆はもう少し長く持ちます。
以前、2年以上取り替えていない子の小筆を借りましたがわりと書けました。
(筆先が減っていてだいぶスリムでしたけど)
まとめ
・正しい持ち方で、しっかり洗っていれば1年。
・筆の持ち方がまだまだの人は、まずは持ち方を直そう!
さて次回は筆の修理です。しっかり洗っていても筆は悪くなるものです。4-3.筆の修理
どうせ捨てるならダメ元で修理してみてはいかがでしょうか。