前回は1.身体・健康編でした。
2.知識・教養
二つ目のテーマは知識と教養。
書道(習字)は美しい字を習います。
それは古典に基づいた、歴史上に存在した字を手本にします。
子どもであれば、書写の字を。
一般の方であれば、古典の字を。
世界が広がる!趣味が広がる!
子どもも大人も初めは基本的な事を習っていきます。
基本から色々なところへ広がっていきます。
子ども・小学生の場合
とめ・はね・はらい、などはもちろんのこと。
書き順や漢字の持つ様々な意味、ひとつの漢字がもつ多くの読み方。
そして、漢字の構成(つくり、組み立て)。
横線は2本なのか3本なのか。
はねるのか、払うのか、とめるのか。
点なのか横線なのか。
くっつけるのか離すのか。
習字で半紙に筆で書くとごまかしがききません。
「ここの線よりこの線を長くする」というような決まりもあります。
これを自分の手ではっきりと書くことで、漢字の構成を覚えます。
組み立て方、とでもいいましょうか。
花はくさかんむりに化けるだな、とか。
歌は可を2つと欠だな、とか。
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脱線。
歌という字。
ちなみに欠は口を大きく開けている人の形。「欠ける」という意味ではありません。
“うた”のことを“カ”といい、初めは可だけで「=うた」でしたが、時代が進むにつれ「可」を他の意味にも使い出した。
じゃあ“うた”の字はどうしようか?
もういっちょとつけてやるか、はい「哥」
もっとわかりやすく人の形もつけるか、はい「歌」
可 → 哥 → 歌
と変化していきました。
そして、可が許可の意味をもつのは、
太古の中国、何かを決める時にはすべて神様にお伺いをたてました。
(新石器時代から鉄器時代に移り変わるあたりですからね)
口は祭器の形、その器を木の枝(  ̄|) で叩きながら
「神様ー!○○やってもいいですかー!!」
と願いながら、大きな声で“うたう”。(占い、占卜)
「 (甲骨割れる) 」(パキ)
「ほら!やってもいいと神もいっている!!」(許可)
ということで、歌の字には可が使われており、可には「やってもいいよ」という許可の意味があるのです。
ちなみに、この占いの結果は時の皇帝により細工がされていたというのが通説。
「おい占い師、ちゃんと仕込んでおけよ」
「おまかせを・・・」
神をバックに権力をふるう。そりゃだれも逆らいませんね。
権力者ってのは頭がいい。
はい、脱線終わり。
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書と筆と建は同じ部品が使われているな、とか。
漢字はピースの組み合わせですので、共通している部品がかなり多いのです。
これは漢字を覚えるのにとても都合がいい。
漢字が苦手!漢字が覚えられない!にも効果あり?
高学年になるにつれ、覚える漢字は画数が多くなっていきます。
漢字の組み立て方を知る。
何となく覚えていたことをはっきりとさせる。確認する。
低学年では、ぱっと見でイメージで(なんとなく)覚えていた漢字が、画数が多くなると分からなくなる。覚えられなくなる。学年が進むにつれ「漢字苦手!」「漢字覚えられない!」といっている子、原因はここらへんにありそうです。
ごまかし無く、半紙に大きくはっきりと書く。
そうすることにより、漢字に使われている部品を覚え、組み合わせていく。
初めて見る漢字でも、その一番最初に、
「この漢字には、この部品とこの部品とこの部品が組み合わさっているんだな」
と覚えれば楽ちん。
部品を覚え、そのイメージを思い描き、くっつけて関連づけさせる。
さんずいは水に関係している、とか。
にすいは、さんずいが凍って点が2つになっちゃったんだよ、とか。
漢字に興味が出てくると思います。
漢字に興味が出れば、言葉に興味が出るでしょう。
熟語、ことわざ、慣用句、他の言いまわしや類語。
さらには語源や字源。
ちょっと前までは白川静先生の関連本がよく売れていました。
その影響で、書店には様々な漢字の起源、字源を扱った内容の本が出版されています。
子ども向けのものもたくさんありますね。
漢字には歴史があり、起源がある。そしてひらがなにも起源がある。
漢字は中国から海を渡って伝わってきた。
それは何年の頃だ、というような話から歴史の話へ飛ぶことでしょう。
自分で調べる子もいるかもしれません。
漢字からひらがなができたんだよ、昔の日本には文字が無くて中国の漢字を借りていたんだよ。
このように話せば、こどもの想像力をかき立てるのではないでしょうか。
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脱線その2。
今の小学生は「まだ学校で習っていないから」とよく言います。
これはいいことでしょうか?
学校で習っていないから、自分にはまだ関係ない、のように考えているように思えます。
それが自分の身近にあるものでも。
学校で、習った/まだ習っていない、という考え方にちょっと違和感を感じます。
学校で習っていようといまいと、それは今、目の前にあるものです。
「全ての漢字を学校で教えてくれる」と考えている子もいます。
何か世界が狭いような・・・。
小学生だからそんなもんでしょ、と言われればまあそうなのかなとも思いますが。
そんな風に考えていたら、自分の名前、親兄弟の名前、住所とか、地名とか、それぞれで使われている学校では習わない漢字はどうなるの?といいたい。
ちなみに漢字の総数は、実用的なところでいうと12000~13000字、とか。
マイナーなものも入れると30000字とも言われています(諸説有り)。
義務教育で習う漢字は約2000字ほど。
なので、地名などは入っていない。
この2000字、というのは、本当に覚えなければいけない最低限の数、と思ってください。
覚える順番も単純に簡単な漢字から、というわけではなく。
読めないと生活に困る、早く読めるようになる必要がある、という順番なのかなあという感じ。
“小学校の6年間でこのくらい覚えてね”という漢字が分かっているのですから、学年問わず覚えられる人はどんどん覚えていけばいいのになあと思います。
もちろん強制ではなく、好きで覚えていく子であればどんどんやらせてあげるというような。
「その漢字はまだ他のお友達が習っていないから使わないでね」とか言うようです。学校の先生は。
何かおかしいような気がするんですよねー。
はい、脱線終わり。
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漢字は一字だけでも見ても何かをイメージさせます。
その漢字がもつ意味や読み・音、形そのもの。
イメージが膨らむと、興味は色々なところへ広がります。
起源、言葉、歴史・・・。
子どもの想像力を刺激しつつ、正しい字形・美しい字形を覚えていきます。
一般・大人の場合
そして大人の趣味、書道の場合。
このシリーズ、4まででてるんですねー。
1と2は買いましたが。
字を習う、ということは同じですが。
子どもの習字とはちょっと違う。
実際書くとなったら、まずは書の古典と言われるものから最初にやっていきます。
・王羲之(おうぎし)
これを一番始めに触れるでしょうか。
少しずつ覚えていってください。中国の人名がぞろぞろ出てきます。
覚えなくても書けるので、まずは気楽に。
伝統的な美しい字を学びます。
楷書のみならず行書・草書。
お好きな方は、篆書・隷書。
それよりも。
おまけでついてくる「書道に関係のありそうなもの」のほうが楽しかったりします。
おまけ?関係者に怒られそうですが・・・。
ただただ「きれいな文字」「美文字」を目指すのもいいのですが!
それだけだと子どもの「習字」と大差無いですし。
「趣味」というにはちと浅いというか・・・。
せっかくなので書の世界や文墨趣味の世界をみてもらいたい。
ここが異世界。タイムマシン。
人類のいとなみといいましょうか。
生活であり、文化であり、美術であり、日常であり・・・。
※注
本来の「書の鑑賞」「自己表現」のような楽しみはもちろんありますが、これは書道を始めてからある程度たってから面白くなるところですので、書道・習字ってどんなもんなの?と考えている人にはピンとこないかなと思いまして。
この記事は「書道ってどうかな?」とこれから始める人に向けた内容で、とっかかりやすさという点からこのような記事になっております。ご了承を。
時の流れ、人の想い
「小学生の場合」で言ったような漢字に関連する知識のみならず、書作品の題材となる中国のことわざ、漢詩や故事成語、日本の俳句などに触れることになります。
孔子・老子・孟子、李白や杜甫、種田山頭火や尾崎放哉・・・。
書作品の題材となるものは数多くあります。
「この杯を受けてくれ どうぞなみなみつがせておくれ・・・」
于武陵「勸酒」っていうんだ。井伏鱒二は訳した人か・・・。
水を渡り また水を渡り
花をみ また花を看る・・・
どこかで読んだことがあったけど・・・高啓の尋胡隠君っていうんだー・・・。
などなど、学校の教科書で通り過ぎていたものが身近に感じます。
詩文の意味をじっくりと味わうもよし。
あなたの琴線に触れる、忘れられない詩に出会えるかも。
書道の場合、「学校の勉強」という感じになるほどしっかり覚えたりはしません。
興味のある人はとことん掘り下げればいいですし、雑学レベルでも問題なし。
お酒を飲みながら、学のあるフリができます(笑)。
中国の歴史が好きな人、史記のエピソードが好きな人、横山光輝にお世話になった人(?)は書道にとっつきやすいかも(笑)。
人間って昔っから変わらないなー!
人間ってみんなこうだよなー!
と訓戒としても使えます。
かわいい、美しい、愛でる
そして王道ですが、書道には「文房四宝」という言葉がありまして。
書道で使う文房具である「筆墨硯紙」を宝物のように大事にします。
これは普段使いではなく“とっておきの物”ということです。
骨董好きの方は逆に要注意です。書くことよりも物に走ってしまったりして。
よっぽどの骨董好きであれば先に述べた筆墨硯紙全てがコレクションの対象になるのでしょうが、書道をやる人の場合は「硯」などが欲しくなる物でしょうか。
・硯(水に濡らすと美しい文様が!!)
・文鎮(小さめのかわいいものが多い)
・水差し(陶器のもの。これも上品なものとか欲しくなります)
・印材(石のハンコ。高いものでなくても、磨いて光のあるものはとてもキレイ)
これは私物の印材です。3.0㎝×3.0㎝×6.5㎝のもの。
秋田市の骨董屋でみつけた印材を磨いてみたら、うまく光るものでした。
(自分で磨くので愛着が湧く!)
もちろん、うまく光らないのもあるので磨いてみないとなんとも。
これはずっしりと重量感もあり。1000円未満で購入。ラッキーでした。
こちらは専門店から購入。「確かなものだから磨けば光るよ」と言われ。
もちろん自分で磨きました。
この流れるような模様がなんとも。
雲のような、砂嵐のような、吹き上げる風のようなイメージ。
石は天然物なので、同じ物はふたつとありません。
これが手のひらの中にすっぽり。
フィギュアにはまる人の気持ちもわかる!
実物・立体がそこにあるというのが何ともいいもので。
骨董品にはご用心
もっとディープになると、拓本やら掛け軸やら。
ここらへんはレプリカで十分。本物を求めると目ん玉が飛び出ます。
本物が手に入らないので、カラーの図版や写真集。
書画や水墨画、中国絵画。これも書籍が手軽。
私物の亀の置物。全長5センチくらい。
ぴかぴか光ってきれいな亀ちゃん。たぶん虎目石でしょう。
彫りはそんなに良くないです。でもちゃんと台があるのがいい。
台があると3割増し良いものに見えてきます。
私は手のひらに収まるかわいい物が好きです。亀は骨董ってほどのものでは無いですね。熱海の骨董店で1500円でした。
値段も大事。だまされてもいいくらいの値段。
趣味の世界がどんどん広がります。
中国美術、骨董、美術館や博物館巡り。
中国旅行、仏教美術、浮世絵、根付け。
ここらへんも書道と親和性が良い。
遠い親戚というか、当たらずとも遠からず。
神社仏閣巡り、中国茶、日本茶。
茶室があると、当然床の間があり、掛け軸を飾っている場合も多いです。
(あの掛け軸の字、なんて書いているのかな・・・)
と見ます。たいてい禅のことばのようですね。
(書いてる字よりも、あの掛け軸の表具・・・すごいなー)
とか。
(あの置物もいいねー)とか。
素人ながら興味が湧いてきます。
骨董に素人な私でも、骨董品の善し悪しで最近気付いた法則があります。
「細かい物は高い」
というもの。
細部まで凝っている物、見えないところまで気を配って作られているもの。
陰になるところや人目に付きにくいところまで、こまかい細工がなされているものはどれも高い!
「ここまでやるかー」と。
作った人の気合いや愛情がわかります。
それがきっといいものなんですよ。きっと。
(私は骨董は素人です)
知識と教養。興味が広がっていきますね。
次は3.コミュニケーション編です。
お楽しみに!