こんにちは、秋田市のしょうじ書道教室です。
とあるお母様からこんなお話を聞きました。
「うちの子、漢字テストのここで“バツ”だったんですよー!」
というお話。よくあるよくある。
その文字とは
はねるのはねないの、とか。
止めるの払うの、とか。
「それ、どっちでもいいんですよ!」
というやつ。
今回は『弟』という字。
みなさん、お手を拝借。お手元にちょっと「弟」と書いてみて下さい。
ついでに「第」の字も書いてみてください。
書けましたか?
さて、今回の「弟問題(ダイモンダイ)」(※弟も第もどちらもダイと読みますよ)。
ポイントはどこだと思いますかー?
縦棒の足、ここにくっつく左はらい。最終画。
この起筆が出ているか出ていないのか。
縦棒から出すのか出さないのか。
書写には許容体ってのがある
書写の文字は許容体というものがあります。
「そこはどちらでもいいですよ」
という所。
「十」の足、最後は止めても払ってもどちらでもよい。
去年あたりだったでしょうか、新聞にも載りましたがこの“許容範囲”がもっと広くなりますよ、ということに。
「木」の縦棒、
止めてもはねても大丈夫になりました。
昔は“バツ”だったんですねー。
でもこれは「書写」の世界だけのこと。
ちなみに書道のほうでは“自己責任”となっており、
「知らんで書いたオマエが悪い」
と、作品の成績や評価がガタ落ちします。致命的。
「誤字、ダメ。ゼッタイ。」
な訳です。シビア。
弟と第、の場合
私はてっきり出さないで書くと思っていましたが・・・。
良い機会なので調べてみました。
まずは、宮澤正明先生の「常用漢字書き方字典」。
こうなっておりました。
弟・第、ともに出ています。
この本的には「出して書く」ということですね。
次は、赤い本、「現代書写字典」。
弟・第、ともに出ていません。
「弟」のところに「始筆の一部が縦画から少し出る」との一文が。
でも、見本の字がそうなってないじゃん(笑)
次は、青い本、藤原宏先生「文字の書き方」。
硬筆見本、毛筆見本、ともにほぼ出していないのですが・・・。
よーく見ると出してるっぽいのがひとつふたつ。微妙。
書写字典、ここまで。
ちなみに許容してもいいところは、「許容」と明記してあり、“ここが許容”と書いてあります。
いずれも、この部分での許容の表示はありませんでした。
書写字典のこの3冊、新旧でいうと、
宮澤本:2012年発行
赤い本:1986年発行
青い本:1979年発行
となっており、宮澤本が最新です。
最新だから正しいとは言えませんが。
「書写」のことは文科省が決めているので、最新=正しい、でもいいのかも。
※教科書体というフォント(活字)で印刷されている字をみると、
「弟」は出ていて、「第」は出ていませんでした。
こういう部分があるから子どもは尚、迷うんだよねー。
書道のほうでは
いちおう書道字典もあたりましょう。
梅原先生編集、「唐楷書字典」。
念のため言っておきますが書道字典は古典の字典ですので、載っている文字は古典上の文字です。梅原先生の直筆ではありませんよ。
出さないのが多数派。出すのは少し。
そして「新書源」。
こちらも出さないのが多数派。出すのは少し。(楷書)
※文字の正しい正しくない、というところは、本来、これら「古典」が基準となります。
古典にあるのかないのか。
多いのか少ないのか。
それを自己責任で判断し、書いていくのが王道です。
まとめると
書道(こちらが本来)
・出す出さない、どちらもある
・楷書で書く場合は出さないのが主流。
書写(義務教育中)
・最新の本で出しているので、たぶん出した方がいい。
・出さずに書いても(許容体としては載っていないが)古典からいって許容。
結論。
バツはおかしいでしょー!
ということになります。
丸つけした先生はちゃんと最新情報が頭に入っていたので、教師としては花丸なのですが、文字の世界でいったら勉強不足です。
これは仕方の無いことで。
こういうことは多々あります。
自分の子どもが今回みたいに学校からプリント持ってきたらなんて言おうかな(笑)
書写との「付き合い方」も勉強のうち。
しょうじ書道教室でした!