前回は半紙のお話でした。書きやすい半紙、ちょうどいい半紙って難しい・・・。自分好みのものを見つけて下さい。
さて、お次は墨のお話です。
書道セットには墨液と固形墨と両方入っています。
固形墨は習字の練習には向きませんし使いません。
体験のために水と固形墨で墨を磨ってみる、というのはいいと思います。
これから「さあ、筆で習字の練習しよう!」というときに、
すずりに水をたらして固形墨ですりすり・・・墨を磨り漂ってくる墨の香りを吸い込み・・・心を落ち着けて・・・今日はどういう気持ちで書こうか・・・どういう作品にするか・・・すりすり・・・
これはこれでいいものなのですが、もうこれは“書道”の世界です。
一から墨を磨るなんて手が疲れるばかりで面白くありません。
ここは初心者向けのサイト。
ということで、墨液でどんどん練習していきましょう。
表具できる墨液、できない墨液
墨もいろいろ。こればっかりですね。
Kuretakeさんの書道セットに入っている墨は「呉竹 ふで思いなぼくてき」が入っています。ぼくてきは墨滴、墨液のことです。
呉竹さんをはじめ、開明さんや墨雲堂さんなどいわゆる書道メーカー製の墨液であればまず問題なく使えるでしょう。
「表具できるかどうか」というのがひとつの目安になりますので、表具できる墨液を準備しましょう。
(“表具”とは、掛け軸にしたり額に入れたりして作品に仕立てることです。そのときに、書いた作品を水のりで厚紙に貼るので、「表具できない墨液」で書いた作品を表具すると書いた文字が滲んでしまうのです)
ちなみに「呉竹 ふで思いなぼくてき」は表具できるかどうか、については商品情報を調べてもはっきりとはわかりませんでした。
うちの教室では祥碩堂もど~る墨液を使わせています。
これも表具可能な墨液です。
あまりお目にかからないような墨液がたまにありますが、こういうものは筆の毛が赤や青に染まってしまいます。1本使うくらいなら問題ないのでしょうが、使い続けるのは筆にとってあまりよくないのかな?と思います。
経験上ですが、こういう墨液を使い続けている子の筆って、筆の根元がスカスカな感じがするんです・・・。ふつう、洗った後の筆の毛の根元ってキュッと締まった感じになるのですが・・・。
あまり明確な根拠ではないですね。
いつ表具することになってもいいように、普段の練習から表具できる墨液で練習しましょう。
すずりの墨液、あまったら?
どの墨液にも、注意書きに「一度出したすみは戻さないで下さい」とうたってあります。
これは経験上ですが、うちの教室ではもったいないのであまった墨液はチューっと吸わせて容器に戻してしまいます。
これで特にトラブルはないのですが、どうなのでしょうか?
墨・墨液は空気に触れると劣化します。時間が経つにつれ、状態がだんだん悪くなっていきます。
ですので、長時間放置した墨は戻してはいけないのだと推測します。
出した後、2~3時間以内なら容器に戻してもいいのではないかな?と思っています。
(戻すときは自己責任でお願いします)
墨液を容器に戻す方法
こんな方法を紹介していいのでしょうか?自己責任でお願いしますね。
- 墨液の容器のフタを開ける
- 右手で容器を持つ。このとき容器はまっすぐ立つように
- 容器の胴(まん中あたり)の部分を軽く押す(このとき新品で中身が満タンに近いと、逆に墨液が飛び出してしまいます。ご注意ください)
- 左手ですずりを持ち、水平を保つ
- 容器の胴は押したまま、すずりの墨に注ぎ口をつける
- 胴を押さえていた右手をゆるめる
以上です。
一度に吸いきれず、まだすずりの中に墨液が残っているならもう一度吸って下さい。
吸い終わった後注ぎ口に付いた墨液をすいとり紙などで拭き取ってください。
フタの中に墨液が貯まるのを防ぎます。フタの中、けっこう汚くなるんですよね。ひと手間かけて下さい。
慣れるまでは机の上にすいとり紙をしいて、その上でやりましょう。
初めのうちは墨をこぼしたり飛ばしたり、必ず失敗しますので。
注意したいこと
墨液を扱う上での注意点です。
その1
注意したいのは、「洗濯で落ちる」とうたっているものです。
この洗濯で落ちる墨は表具ができないタイプの墨液です。
これはあまりおすすめしません。
墨が服に付くのが嫌なら、着る服を黒い服にするとか、着古した服を習字の練習用の服にするとかで対応しましょう。
「さて、表具するから墨液換えなきゃ!」とはなりません。普段練習していてあとから見たときに、
(・・・あ、ちょっといいのができたから表具してとっておこうかしら・・・)
(・・・これ、表具して田舎のおじいちゃんにプレゼントしようかしら・・・)
こうなるんです。そのときに「洗濯で落ちる墨」では表具できないのです。ですから、普段から“表具できる墨”を使っていきましょう。
その2
あとは「濃墨」となっているもの。標準の濃さより濃くトロトロしています。このタイプの墨液は乾きにくく、半紙での練習には向いていません。
その3
基本的に、墨液は違うメーカー・種類のものは混ぜられません。
ひとつのすずりに違うメーカー・種類のものが混ざらないよう使いましょう。
その4
墨液をすずりに出す時、戻す時、泡が出ることがあります。
墨液を出す時にしっかり逆さにしないと泡がたくさん出てしまいます。
この墨液の泡、要注意です!
泡がはじけるとき、びっくりするくらい飛びます。
墨液の泡は意外なほど広い範囲に飛び散るものです。向かいに座っている子の服まで飛ぶこともあります。
ですので、泡はなるべく出ないように。
もし出てしまったらその泡をはじけさせるのですが、手やすいとり紙などで覆うようにしておいてからはじけさせるなど、細心の注意が必要です。
以上、注意したい点でした。
まとめ
《小学生なら》
書道セットの墨液を使い終わったら、表具できる墨液を準備しましょう。
《大人の方なら》
表具できる墨液ならなんでもOK!
次回はすずりをご紹介します。
1-5.すずり
昔と違っていまは軽いプラスチック製。しかも裏表両面使えるものもあります。裏面と表面の違いなど説明していきます。